8月25日に松尾市長と面会し、議員団(吉岡和江 赤松正博 小田嶋敏浩 高野洋一)として以下のとおり申し入れを行いました。市長は判断の先送りを9月議会で表明するようですが、日々の生活に関わる問題だけに、「政治問題化」せず、冷静に考えてもらいたいとの立場から申し入れを行ったものです。
1.焼却ごみ削減は地球環境保全・温暖化対策に不可欠の取り組み
ここ数年、大型の台風や激しい集中豪雨など、身近なところで地球温暖化の影響を感じることができます。大きな国際問題にもなっていますが、私たちにとっては、やはり身近なところからの取り組みが大切であると思います。
そうしたなか、鎌倉市としても、環境に与える負荷を減らしていく施策を進めていますが、その最大の取り組みが、ごみ処理行政であり、この10年間で環境負荷を与える焼却ごみは約2万5千トン以上減少しています。
これは日々の分別・資源化に取り組む市民と市行政との協働による貴重な成果であるといえます。ごみの焼却は温暖化を促進する二酸化炭素の大量発生を招くことから、今後さらに環境負荷を軽減していく取り組みが不可欠であるといえます。
鎌倉市では、ごみ処理基本計画において、毎日の生活や営業で消費し排出されるごみ処理の脱焼却・脱埋立をめざす「ゼロ・ウェイスト」を目標に取り組んでおり、今後さらに焼却ごみを減らすには、特に燃やすごみに占める量の多い「生ごみ」(厨芥類)を分別・資源化する取り組みが必要不可欠であるといえます。
2.焼却施設の老朽化は深刻であり、更なる資源化を前提に早急な対応が必要
一方、それでも残る焼却ごみについて、どうしても安定的な処理が必要です。現状、今泉と名越の両クリーンセンターで焼却処理を行っているわけですが、両施設とも老朽化が進んでいます。平成26年度頃までが耐用年数となっており大変深刻な状況にあります。
今泉の焼却施設については、かつて竹内市長時代に「休止」を決めましたが、名越だけでは焼却処理しきれないことが明らかになったため、石渡市長就任後に見直しを行い、今泉焼却場の改修後、約10年間で施設を廃止することを前提に、再開したという苦い経験があります。改修している間(平成14年12月~17年3月)は、名越で処理できない分を、他市(5市)や民間業者にお願い(自区外処理)して、多額の財政負担(税金)を要したのです。
名越の焼却施設についても耐用年数が迫っており、耐用年数があと5年程度ということは、もう待ったなしであるということです。市民生活を預かる市長として、これまで積み上げられてきた現在の施策を早急にかつ着実に行わなければならない危機的な事態であることを明確に認識する必要があります。仮にいま、おかしな「政策転換」をすれば、10年、20年後先、必ず大きな市民負担(生活面・財政面)を及ぼすことになるでしょう。
3.平成22年度予算の代表質問で指摘した「表裏一体」の取り組みに対する認識
「ごみ行政の取り組みについて、基本姿勢を確認したいと思います。持続可能な市政運営という点では、ごみ行政は、まさに「待ったなし」の状況にあります。市長は、提案説明のなかで、循環型社会の形成をめざし、分別収集・再生利用・発生抑制の促進と、焼却ごみの安定的な処理のため、名越クリーンセンターの延命化計画を述べましたが、肝心な点には触れられませんでした。予算案には、バイオマスエネルギー回収整備事業として、生活環境影響調査等の実施が盛り込まれていますが、市長は現時点において、この事業に対して、どのように考えておられるのでしょうか。
鎌倉における持続可能なごみ処理行政を構築するためには、焼却ごみを減らして、現在の2施設から1施設でも処理可能な状況を早期につくることが必要不可欠です。逗子市との広域化協議の顛末からも明らかなように、他市頼みというわけにはいきません。まさに自力での取り組みが必要です。
そうした意味で、焼却ごみを大幅に減らすには、生ごみの分別・資源化、バイオマス施設の整備を進めること、同時に、それでも残る焼却ごみを安定的に処理するために必要な名越施設の延命化を図ること、この両方を統一的に進めることが求められており、まさに表裏一体の取り組みであるはずです。名越焼却施設の改修は、生ごみ資源化施設の建設・稼働が大前提であり、この両者の関係を抜きにして、名越焼却施設の延命化だけを強調する言明は問題であるといわざるを得ません。この問題に対する、きちんとした認識を示していただきたい。」
当市議団は、今年の2月議会・代表質問で上記のように指摘しました。改めていま、市長の基本的な認識が問われていると思います。結論的にいえば、仮に生ごみ資源化施設は「見直す」が、名越施設の改修計画だけ継続などということは「有り得ない」のです。大町・材木座地域の皆さんは、ごみの減量化・資源化という「ゼロ・ウェイスト」への方向性(現在より焼却量が減ること)を大前提に、焼却施設の延命化に理解を示しているのです。
よって、バイオマスエネルギー施設建設を「見直す」のであれば、今泉の焼却施設の廃止も「見直す」べき、そうでなければ名越の焼却施設の延命化も「見直す」べきというのが、過去の「名越一元化」問題に強く反対した経過のある地元地域の強い声なのです。こうなると結局、バイオマス施設の整備を進めることと名越焼却施設の延命化は、まさに表裏一体の取り組みであると同時に、今泉焼却施設の廃止もあわせて「三位一体」の関係であるということなのです。
4.日々の生活に関わる行政課題、市長は「政治問題化」せず良識ある判断をすべき
以上から、市長の政治的背景に何があるのかは分かりませんが、ここで安易に生ごみ資源化を「見直す」などと判断することは、これまで審議会などで積み上げてきた問題解決の道筋を全て滅茶苦茶にするということであり、ごみ処理基本計画の理念・方向性を市長自ら覆すことを意味するのです。時間も展望もなく、本当にこんな判断ができると考えているのでしょうか。
また、コスト論についてですが、バイオマス施設建設には多額の財政を要することは事実ですが、お金をかけないで都合よくごみ処理する道などないのです。全量を名越「一元化」など全く有り得ませんが、当然、相当なコストがかかります。ましてや全量自区外処理は、今泉の例をだすまでもなく中長期的には施設建設より膨大な財政負担になるでしょう。国からの交付金も得ながら進める現事業の方向性は、全国の自治体の先進事例にもなる環境施策であることに確信をもち、「政治問題化」せず、市長として良識ある判断を行うよう切に願うものです。