今年は横浜で開催された第66回自治体学校に参加しました。地方自治の発展にむけて学ぶ全国集会で、1日目の基調講演は、中山徹奈良女子大名誉教授「地方自治と地域 この1年から考える」でした。
特徴的な内容を画像で添付します。
① 国の政策から地域、市民生活を守る
② 公共性の再生 ・教育における公共性の再生
・地域経済における公共性の再生
・まちづくりにおける公共性の再生
③ 自治体の再生
記念講演は、フォトジャーナリストの安田菜津紀さん「紛争地、被災地に生きる人々の声-取材から見えてきたこと」でした。パレスチナのガザ地区、ウクライナ、そして石巻…。安田さんが現地取材した紛争地や被災地で出会った人々の「生の姿」を通して、苦難の中で懸命に生きる人々と共に私たちがあろうとすること。その大切さと、言葉にならない感情を抱きました。何よりも、戦争なんてしちゃいけないって。それに加担することも。言葉だけでなく、自治体としても、そこに生きる私たち一人ひとりの有り様が問われるのだと。
また、いしかわ自治体問題研究所事務局の方から報告された「能登半島地震の実態と課題」からは、防災計画を改定してこなかった石川県の無策とともに、市町村合併後の職員数大幅削減により質量ともに自治のレベルが低下し、救援や復旧に大きな支障が生じたとのことで、市の取り組みという点で考えさせられました。
分科会に参加して…公共性・コモンの再生を
2日目は分科会で、『自治体民営化のゆくえ―「公共」の変質と再生』に参加し、学びました。講師・助言者の尾林芳匡弁護士は、自治体の「民営化路線」を批判してきた第一人者です。そもそも公共サービスは市場原理の民間部門とは違った専門性、人権保障、実質的な平等確保(経済力の格差是正)、民主性、安定性(継続性)が必要で、それを崩してきたのが30年余り続いている「新自由主義路線」であるといえます。
PFIについては、初期投資を民間資金の活用により税支出を抑えられる「メリット」がいわれてきたが、結局のところ民間企業の利益を保証する形で数十年の税支出を行うわけで、トータルとして税金が「安上がり」になるわけではないこと。最近では、初期投資における物価高騰の影響で企業の動向に変化が生じてきていること。2021年に会計検査院がPFIの報告書をだしており、問題性が指摘されているにも関わらず、今日まで「国策」として推進されていますが、公共サービスの向上ではなく、企業利益の場の創出に過ぎないこと。そして、世界に目を向けるとイギリスでは既に保守党・労働党ともにPFIからの脱却を公約にしており、「公共の再生」=「新自由主義脱却」の動きが起こっているとのことで、印象的でした。
鎌倉市においても、導入施設について実際はどうなっているのか、検証が必要であると認識したところです。なお、世田谷区の区庁舎建設において、意識的にPFIを採用しなかったことは注目すべきことです。
鎌倉市の施設にも多く導入されている指定管理者制度についても、本質は運営権ではなく、利権を広げているのだと厳しく指摘されました。直営から民間事業者に代わって「改善」されたのであれば、そもそも公共サービスが不十分であったということに過ぎません。鎌倉でも既に指定管理事業者において労働条件等の雇用問題が生じています。
安定性という点では、市内最大の文化施設である鎌倉芸術館においてサントリーが次期応募から撤退し、なんと公募事業者ゼロという事態に陥ったことは記憶に新しいところです。私自身も取り組み、市が出資する財団に指定管理を担ってもらい、休館を免れたことは適切であったと認識しています。今後、持続可能な運営となるように文化政策として公共的な支援が必要不可欠です。
最近、問題となった子どもの家の「自衛隊プログラム」についても、民間企業に運営を委ねていることが問題の根底にあります。指定管理者制度についても、一度立ち止まって見直す時期にきていることを改めて認識した次第です。もっと市職員は地域の中に入り、より住民に身近なサービスに従事すべきではないでしょうか。その経験と知識が企画立案や地に足のついたサービス改善・充実につながるはずです。そういう意味では、「コンサル企業頼み」からの脱却もまた、鎌倉市という自治体の公共性=コモンの再生につながると考えるものです。