高野議員が討論、5議案に反対・17議案に賛成しました
日本共産党鎌倉市議団を代表して、議案第99号令和6年度鎌倉市一般会計予算の修正部分を除く原案、第101号令和6年度鎌倉市国民健康保険事業特別会計予算、第104号令和6年度鎌倉市後期高齢者医療事業特別会計予算、第107号鎌倉市スクールコラボファンド活用基金条例の制定及び第109号鎌倉市芸術館条例の一部を改正する条例の制定については、以下に述べる理由から反対し、その他17議案には賛成するものであります。
まず、一般会計予算について申し上げます。今議会では、日本社会における「失われた30年」により、実質賃金の低下や「上がらない」年金水準や社会保障の削減などによる可処分所得の低迷、経済的格差の拡大を背景に貧困や暮らしの困難さが拡大していることなどにより、構造的に日本経済が長期の停滞に陥っていることを指摘しました。とりわけ社会や経済の基盤となる雇用の不安定さを拡大させ、非正規雇用を増やし続けてきたことが、特に30代から50代といった働く世代を直撃し、結婚しづらい国、子どもを産み育てづらい国、総じて深刻な少子化をむしろ加速させる要因を政治が自らつくりだしてきたわけであります。その根本にある「新自由主義政策」からの転換が求められており、そのことが地方政治にも問われていることを改めて指摘するものであります。
鎌倉市における雇用の改善について、常勤職員と非常勤職員の役割分担やバランスを考慮し、必要な労働環境を確保して職員がイキイキと働くことのできる環境整備や次期の職員数適正化計画について「業務量に見合う職員数」の検討を言われました。このことの具体化はこれからであり現状、十分とは全くいえません。審査では、委員会での委員長報告にも盛り込まれましたが、地域と連携して防災の取り組みを進めるために必要な職員配置、司書など専門職の正規雇用、さらに作業センター職員の新規雇用などを求めました。市民サービス向上のために必ず実施すべきであります。公共部門において雇用政策の「範を示す」ことが、民間を含めた雇用環境の改善につながると考えるものであります。
歳出については何よりも市民生活の困難さに心を寄せ、その向上のために最大限、予算措置をおこなう姿勢が強く求められています。その点で、障害児向け障害福祉サービスの利用者負担額の無償化や妊産婦健康診査費用の補助の拡充、高校就学援助金の拡充など、前向きな施策は評価する一方、保育士等を確保する際の費用への補助などは実態に照らしてなお不十分な水準と言わざるを得ません。
また、学校給食の無償化については、特別委員会の委員長報告で示されたように、議会の明確な意志として求めていることであります。いつまでも教育委員会として「研究」などと言明するのではなく、先進自治体も参考にしつつ、教育的な視点から本格的な実施にむけた前向きな検討を強く求めるものであります。
さらに指摘すべきは、高齢者の外出支援に係る補助制度についての市の認識です。以前にあった制度を「財政難」を理由に「凍結」したにも関わらず、なぜ頑なに市民や議会の声を素直に受けとめないのか。今は若い世代でも、年齢を重ねれば誰もが高齢者になります。私自身もそうで自明なことです。財政状況の方は、財政調整基金の令和6年度残高見通しについて、予算で40億円の取崩をしてもなお、執行残等により年度末には60~70億程度の残高見込と聞きました。高齢者全体を視野に入れて交通費助成を行える財政力は十分にあるわけで、本来、凍結を解除すべきなのです。昨年9月議会の決算特別委員会において、総意として示された意見について、行政として勝手な解釈を改めるよう強く指摘するものです。
この間、市民的に問われているのが、本庁舎等整備事業と深沢地域整備事業であります。
本庁舎整備事業について、市長は「位置条例の可決なしには、基本設計委託費は計上しないものと考えています」と自らが言明した方針を改め、市民の「理解が高まる、納得感が高まる」ことを期待して、基本設計の関連予算約3億円を計上しました。それがたとえ行政運営上、違法とまではいえないとしても、果たして適切であるといえるでしょうか。市民や議会に対し、自ら約束したことを1年で覆すという政治手法が果たして市民の理解や信頼を得ることにつながるのでしょうか。基本設計は、次の詳細設計・実施設計の基となる設計業務であり、工事の着手とはいえないものの、事実上、工事の準備予算であることは明らかです。
市役所移転問題について、現在地利活用基本計画が策定されれば、行政としての基本的な材料は揃うことになるのですから、このような「外堀を埋める」手法を用いるのではなく、移転と再編を行う2つの計画を市民により分かりやすく示しつつ、市長自らが住民投票条例を提案し、議会での可決を経て、来春に予定されている市議選との同日投票を含め、堂々と正面から市民の民意を問うべきではありませんか。
そうすれば、この1年間の取り組みを含め、両計画に対する市民の賛否が明確な形で示されることになり、再編を伴う移転事業についての市民的な答えが出るわけであります。それにより「位置条例」の議決も民意に沿って行われることになるでしょう。そうした政治手法による解決を図ることこそが、半世紀以上先の鎌倉を左右する大事業に相応しいことを申し上げるものであります。責任ある解決を図るために、です。
深沢地域整備事業については、とりわけ村岡新駅建設に伴う工事負担金の予算が計上され、本格的に工事が着手されることになります。令和7年度から14年度までの長期にわたり、42億3千5百万円もの債務負担行為が設定されたことにより、保留地処分金の見通し如何によらず、税金としての負担を保障することになるわけです。それにも関わらず、詳細設計の「成果物」について、「今後JR東日本が発注する工事価格に関わる情報となるため詳細については開示できない」というのは本末転倒ではありませんか。いったい誰のための建設事業なのでしょうか。今後、工事が始まった後、設計変更の必要が生じ、建設費用等が増加する場合においても同様の説明で市民に情報の詳細が明らかにされない可能性があり、公共工事として重大な問題であるといわなければなりません。159億円が本当に適切な費用であるかを含め、本当に市民のための事業なのか、甚だ疑問であります。
委員会審査において、新駅を含む深沢整備事業の見通しについて伺いました。答弁は率直なもので、「極論をいえば、先の見通しは誰にも分からない」と言われました。本音として、現在の社会経済状況を素直に認識するならば、そうだろうと思います。ですから、より慎重な政治判断が求められているわけであります。少なくとも、新駅建設との「一体施行」には道理がないことを重ねて申し上げるものであります。
ごみ問題についてですが、令和6年度は、ごみ処理において重要な役割を担ってきた名越クリーンセンターの焼却停止という節目を迎えます。今後、逗子市などに焼却をお願いするうえで、中継施設建設は不可欠であることから、そのことを最優先に位置づけ、名越や今泉クリーンセンター周辺住民への丁寧な対応と地域支援に全力をあげるよう求めるものです。
そのうえで、今泉の生ごみ資源化施設建設については方針変更を視野に入れ、早期に判断し、委託を含め現実的な処理方策を検討することが問題の打開に向けて必要であることを申し述べるものです。逗子市での焼却処理が終了する10年後以降のことを考慮しても、生ごみの資源化処理がどうしても必要だからです。
また、にわかに急浮上している燃やすごみの戸別収集については、費用の算出方法を実態に見合った形で見直すなど、過度で不正確な「費用削減効果」をアピールするのではなく、ある程度のコストを要することは自明であり、ありのままの実態を市民に誠実に示すべきです。そのうえで、今後更なる市民合意に努め、スケジュールに捉われることなく慎重な検討を行うよう求めるものであります。
次に、国民健康保険事業特別会計予算については、そもそも制度における構造的な問題がありますが、保険料水準の高さは異常であり、「仕方ない」では済まされない状況にあります。運営基金の計画的な活用はもとより、これ以上の保険料負担を抑制するため、強い姿勢で国に対して財政支出を働きかけることを強く求めるものです。あわせて、一般会計からの繰り入れについても、国の方針に関わらず、鎌倉市として国保会計を守る観点から責任ある支出を行うよう求めるものであります。
次に、後期高齢者医療事業特別会計予算については、令和6年度から2年間の保険料水準について、県広域連合の議会で決定される予定です。委員会の質疑では、約1割の負担増になるとのことです。県広域連合として独自財源の確保を含め、保険料の抑制を図る具体的な措置を行うよう市として働きかけるべきです。あわせて、県広域連合の議員数が少ないため、鎌倉における高齢者の意見が直接的に反映されないこと、広域連合議会の審議も形式的かつ短期間で十分とはいえず、抜本的な改善が必要であることを申し述べるものです。
次に、鎌倉市スクールコラボファンド活用基金条例の制定について、申し上げます。
「スクールコラボファンド」は、民間の様々な人々や団体を通じて、学校における様々な学びを行う実践そのものには積極的な意義もあると認識しています。同時に、公教育の実践はいうまでもなく日々の授業などを通した営みにあり、ガバメントクラウドファンディングを活用した授業というのは、それに付随した位置づけであるべきです。
公教育に必要な事業そのものは寄付でなく、予算化して対応するのが基本であります。寄付による基金を条例化して制度的に位置づけて行うことは、公教育のあり方との関係で馴染まないといわなければなりません。条例化までして恒久的な位置づけをする必要は全くないことを指摘するものであります。
最後に、鎌倉市芸術館条例の一部を改正する条例の制定について、申し上げます。芸術館の運営については、文化行政の立場から更なる支援が必要です。サントリーが指定管理者から撤退し、次期の公募にどこからも手が挙がらなかった教訓から学び、早期に指定管理料の適切な見直しなどを行うことを改めて求めるものです。現在の社会情勢において、市民の文化的活動を保障する観点から、利用料金の見直しは運営面での支援を十分に行ったうえで、利用者や関係団体との意見調整も行うなどして判断すべきでありました。その点で問題があることを率直に指摘するものであります。以上で、討論を終わります。