〇会派を代表して高野議員が行いました
日本共産党鎌倉市議会議員団を代表して意見を申し上げます。議案第97号鎌倉市子どもの家条例の一部を改正する条例の制定について、議案第98号鎌倉市放課後子どもひろば条例の一部を改正する条例の制定について、議案第101号鎌倉市スポーツ施設条例の一部を改正する条例の制定について、議案第87号令和4年度鎌倉市一般会計予算及び議案第89号令和4年度鎌倉市国民健康保険事業特別会計予算について反対、その他の9議案については賛成するものであります。
鎌倉市一般会計予算については、私自身、予算特別委員となった4年前に続き、事情は全く異なりますが、修正案(生涯学習センター管理運営事業のうち、10月からの利用区分変更等に必要な経費の削除)を提案させていただきました。当時とは異なり、今回は多数の賛同をいただけず大変残念に思っていますが、筋を通してご賛同いただいた会派・議員の皆様に心より感謝する次第であります。それ以上はあえて申し上げません。
●過去最高の財政調整基金残高になる見込
修正部分を除く原案について簡潔に申し上げます。歳入に関連して、財政調整基金が大幅に増加し過去最高額の60億円に達する見込みであります。今年度の収入の落込み幅が予想を下回ったため、結果として積立額が増えることは理解するものですが、昨年9月の決算特別委員会における原局質疑で、40億円以上は確保したいという答弁に照らしても多額の基金となり、事実として大幅に積み増しする財政運営になっているわけです。
そうであれば、安定的な財政運営を図りつつ、何よりもコロナ禍で市民の暮らしを応援する立場で政策形成を行い、極力、市民への経済的支援等の充実に努めるべきであります。今回の予算審議では、高齢者への交通費補助制度の復活と継続的な制度の実施、多くの方が悩まれている難聴への支援として都内で広がっている補聴器購入の補助など施策の充実を求めました。もはや財政が厳しいから施策の実施が困難という理由は成り立たず、原局との質疑でもそのような答弁は一切ありませんでした。当然であります。ただいまの委員長報告に盛り込まれた項目を含め、議会審議で要求した施策の実施や改善について前向きに検討されるよう強く求めるものであります。
また、市政運営における基本姿勢の問題として、福祉や教育など市民生活にとって重要な部門について、何よりも市民との信頼関係を大切にした対応が求められ、質量ともに、職員体制の改善が必要であります。代表質問で、今や世界的課題の一つである新自由主義を転換し、一人ひとりに寄りそった市民の声が届く鎌倉市政を求めましたが、残念な答弁でありました。特に雇用について、今や働く人の約4割、女性や若者の5割以上が非正規雇用になっています。人件費削減を目的とした労働法制の規制緩和による非正規化の増大は、雇用を不安定にしただけでなく、日本経済そのものを弱くしてしまいました。いわゆる「就職氷河期世代」を含む35歳~44歳の単身世帯の所得は、1994年に500万円台が最多でしたが、25年後の2019年には300万円台が最多となりました。非正規雇用の所得分布でみると、200万円台の世帯数が最も多くなっています。こういう社会構造を官民あげてつくってきたわけで、その見直しこそ、いま求められているわけです。
市として市民ニーズや業務の実態に即した雇用の再構築が必要であり、少なくとも図書館の正規司書を早期に採用することや、手遅れとならないよう作業センターの技能労務職の新規採用にむけ方針の転換を図るよう求めるものです。これからも非正規雇用を拡大し続けることが本当に経済発展につながるのか。むしろ正規職をきちんと採用し育てた方が質量ともに効率的な業務体制につながるのでないか、真剣に考える必要があると思います。とりわけ技術や経験の継承などに配慮し、総合的な視点で見直すべきであります。
▲大型開発の見直しを…深沢地域整備事業について
現在の財政状況は概ね健全である一方、今後、市が計画している大型事業や公共施設の再編整備については強い懸念があります。特に、深沢地域整備事業について地に足の着いたまちづくりが求められます。右肩上がりの経済状況では全くない中で、これから本格的な人口減少社会に入る中で、本当に企業誘致が計画通りに進み、保留地処分が計画通りに進むのでしょうか。このまま都市計画を進めれば、事業区域内に建築物が建設され始める令和10年度に「まち開き」を行うとのことですが、たった6年後です。新駅建設はその後の予定になるわけですが、政治の立場として大局的にみて、このまま事業に踏み出すことにはリスク管理の点からも強い疑問を呈するものです。さらに、市民にとって近距離の駅は、湘南モノレール深沢駅や町屋駅、JR大船駅であり、市外の村岡新駅ではありません。しかも新駅ができて土地評価が上昇すると、結果、約11億円の増税になる見込です。こうした大型開発については、大局的な時代状況からも慎重になるべきです。新駅建設による一体開発は行わず、深沢のまちづくり計画を見直すよう改めて求めるものです。
■市役所本庁舎移転は時期を含め見直しを
深沢の市街地整備が「まち開き」となる令和10年度に、先行的に整備予定なのが市役所移転による本庁舎整備であります。このまま進めると、区画整理事業で深沢事業用地に様々な建物が建とうとする時点で新庁舎が先行的に完成となり、新たな市街地が形成される前に市役所を移転することになります。これは決して形式的な問題ではなく、移転の前提にも関わる重要な点の一つです。原局質疑で、他市の移転案の事例も紹介しましたが、まちづくりが既に行われているか、もしくは中心市街地の整備が具体的に進んでおり実態を伴っているなかで移転整備されるのが通常です。鎌倉市のように、新たな市街地整備が本格的に進む前に本庁舎を整備しようとする事例は聞いたことがありません。このような事例が全国的にあるかどうか質問しましたが、市の担当は答えることができませんでした。
市内他地域からの交通の利便性確保を含め、本庁舎の移転に相応しい都市計画や新たな中心市街地となるまちづくりの担保がどこにもありません。もし、保留地処分が思うように進まない場合、そこに建った本庁舎は市民にどう映るでしょうか。しかも、事業用地の商業エリアは西側なため、本庁舎側というより、柏尾川を挟んで市外に整備予定の新駅側との動線を重視する計画になっています。これで鎌倉市の新たな中心市街地といえるようなまちづくりに本当になるのでしょうか。まちづくりを大局的に見て、そのような疑問を持たざるを得ません。わずか6年後に本庁舎の移転・整備をしようとしているのに、事業用地の周辺地域における道路や交通などの改善計画が見えてこないのも何故でしょうか。約170億円の大型事業であり、歴史や文化的な視点からも問われている事業です。市民との関係から失敗は許されないだけに、一度冷静になって立ち止まり、整備スケジュールの変更を含め、計画の見直しを強く求めるものであります。以上で討論を終わります。