鎌倉市長 松尾 崇 様
2020年7月31日
日本共産党鎌倉市議団長 吉岡 和江
市議会議員 高野 洋一
市議会議員 武野 裕子
新型コロナウイルス感染症対策に関する緊急申し入れ(質問状)
新型コロナウイルスの感染再拡大ともいうべき事態が東京を中心に広がり、極めて深刻な状況となってきている。神奈川県においても感染者数が増加しており、市中感染が起きても全く不思議ではない状況になりつつあるのではないかと不安が広がっている。
一方で、政府は「GOTOトラベルキャンペーン」と称した感染再拡大の対応と矛盾する施策を進めており、そのことも含め政府の無策と支離滅裂な対応に強い批判の声が国民や鎌倉市民の中にも広がっている。
今こそ、命を守る責任ある危機管理が日本の政治に切実に求められている。日本共産党は28日、安倍首相あてに「新型コロナ対策にかんする緊急申し入れ」を行い、特に感染震源地(エピセンター)の地域を面で押さえ、大規模な検査を防疫の視点で実施することなどを強く要求したところである(別紙参照)。
上記を踏まえ、市民の命を守り適切なコロナ支援を求める立場から、鎌倉市に緊急申し入れを行い、その姿勢を質すものである。なお、「鎌倉市議会災害対策会議」(議会BCP)のあり方について現在、議論中であり、当該会議に縛られる必然性は全くないことから、責任ある回答を求めるものである。
記
1.「GOTOトラベルキャンペーン」が観光地である鎌倉市にどの程度の影響を及ぼすか、定かでないが、感染再拡大の状況下で有害無益であるため、鎌倉市として政府に対し、神奈川県を含む首都圏における同キャンペーンの中止を強く求めること。
2.感染再拡大の状況下で、コロナ対応・非コロナ対応を含めて、医療崩壊を未然に防ぐための取り組みは極めて重要である。国や県の支援だけでは十分でなく、かつスピードも遅く、医療機関そのものへの支援は極めて弱い状況にある。したがって、「国の二次補正で県が対応済。市としての給付は実施しない」という無責任な判断ではなく、7月臨時議会において修正議決し、予算減額した財源の活用も視野に入れるべきである。医療従事者を励まし、医療機関を支援する一定の給付を実施すること(厚木市の事例等)。
3.介護や障がいなど福祉関係機関への支援も重要である。市が5月に実施した市内介護施設へのアンケート結果によると、減収している事業所は約5割であり、マスク等購入などの経済支援の声も寄せられていると認識している。そうした実態や要望に市は応えないのか。この点でも国や県の施策は極めて弱い状況にあることから、7月臨時議会において修正議決し、予算減額した財源の活用も視野に入れるべきである。介護や障がいなど福祉関係機関を支援する一定の給付を実施すること(市内団体からの要望内容等)。
4.7月臨時議会において修正議決し、予算減額した「鎌倉応援買い物・飲食クーポン」に代わる施策の検討に関して、全市民に1人3千円という考え方は修正すべきである。例えば、「インクル相談室鎌倉」に寄せられた相談は、4~6月の合計で実に462件に及び、「住宅確保給付金」は既に昨年1年間の申請件数を上回っていると聞いている。
このことからも、市内において生活困難な方や、今後の状況で困難が予測され支援が必要と思われる所得階層の方々への給付を重視して検討すべきである。その際、確実な施策として従来も行った商品券の配布、もしくは割引型との併用も含め、商工関係団体と十分な協議を行い、基本的な考え方を事前(定例議会より前)に示すこと。
※ 過去に三次にわたり鎌倉市議会災害対策会議を通して申し入れた内容に対する回答は、ようやく7月1日にされ、同月3日に議員のタブレット端末に配信されたものである。極めて遺憾であり、議会軽視ではないか。当申し入れに対する責任ある回答がされない場合は、市議会の文書質問における対応も視野に入れるなど、市議団として断固とした取り組みを行うことを表明するものである。
以上
(別紙)
内閣総理大臣 安倍晋三 殿
2020年7月28日 日本共産党幹部会委員長 志位和夫
新型コロナ対策にかんする緊急申し入れ
新型コロナウイルスの感染急拡大は、きわめて憂慮すべき事態となっている。感染の急激な拡大が、医療の逼迫(ひっぱく)、さらに医療崩壊を引き起こし、救える命が失われることが、強く懸念される。
にもかかわらず政府が、感染拡大抑止のための実効ある方策を打ち出さず、反対に感染拡大を加速させる危険をもつ「Go To トラベル」の実施を強行するなどの姿勢をとっていることは、重大である。
現在の感染急拡大を抑止するには、PCR等検査を文字通り大規模に実施し、陽性者を隔離・保護するとりくみを行う以外にない。
この立場から、以下、緊急に申し入れる。
(一)感染震源地(エピセンター)を明確にし、その地域の住民、事業所の在勤者の全体に対して、PCR等検査を実施すること。
現在の感染拡大は、全国でいくつかの感染震源地(エピセンター)――感染者・とくに無症状の感染者が集まり、感染が持続的に集積する地域が形成され、そこから感染が広がることによって起こっていると考えられる。
たとえば、東京都では、新宿区は、感染者数、陽性率ともに抜きんでて高くなっており、区内に感染震源地が存在することを示している。東京の他の一連の区、大阪市、名古屋市、福岡市、さいたま市などにも感染震源地の広がりが危惧される。
政府として、全国の感染状況を分析し、感染震源地を明確にし、そこに検査能力を集中的に投入して、大規模で網羅的な検査を行い、感染拡大を抑止するべきである。
これらの大規模で網羅的な検査を行う目的は、診断目的でなく防疫目的であること、すなわち無症状者を含めて「感染力」のある人を見つけ出して隔離・保護し、感染拡大を抑止し、安全・安心の社会基盤をつくることにあることを明確にしてとりくむ。
(二)地域ごとの感染状態がどうなっているのかの情報を、住民に開示すること。
たとえば、東京都では、新規感染者数とともに、検査数、陽性率を何らかの形で明らかにしている自治体は、14区市(新宿区、中野区、千代田区、大田区、世田谷区、足立区、台東区、墨田区、中央区、北区、品川区、杉並区、八王子市、町田市)にとどまっており、他の自治体では検査数、陽性率が明らかにされていない。
全国をみても、20の政令市のすべてで、市内の地域ごとの検査数、陽性率が明らかにされていない。これではどこが感染震源地なのかを、住民が知ることができない。
ニューヨークなどでは、地域ごとの感染状態が細かくわかる「感染マップ」を作成し、明らかにしている。
感染状態の情報開示は、あらゆる感染対策の土台となるものである。
(三)医療機関、介護施設、福祉施設、保育園・幼稚園、学校など、集団感染によるリスクが高い施設に勤務する職員、出入り業者への定期的なPCR等検査を行うこと。必要におうじて、施設利用者全体を対象にした検査を行うこと。
感染拡大にともなって、これらの施設の集団感染が全国で発生しており、それを防止することは急務である。
(四)検査によって明らかになった陽性者を、隔離・保護・治療する体制を、緊急につくりあげること。
無症状・軽症の陽性者を隔離・保護するための宿泊療養施設の確保を緊急に行う。自宅待機を余儀なくされる場合には、生活物資を届け、体調管理を行う体制をつくる。
中等症・重症のコロナ患者を受け入れる病床の確保を行う。新型コロナの影響による医療機関の減収補償は急務である。減収によって、医療従事者の待遇が悪化するなどは絶対に許されない。医療従事者の処遇改善、危険手当の支給、心身のケアのために、思い切った財政的支援を政府の責任で行うことを強く求める。
もはや一刻も猶予はならない。日本のPCR検査の人口比での実施数は、世界で159位であり、この異常な遅れは、どんな言い訳も通用するものではない。政府が、自治体、大学、研究機関、民間の検査会社など、あらゆる検査能力を総動員し、すみやかに行動することを強く求める。
※ 感染者の急増が見られる主な地域の陽性率
「新型コロナ対策にかんする緊急申し入れ」のさいに示した「感染者の急増が見られる主な地域の陽性率」は以下のとおりです。
〈東京都〉
○東京都 6.5%(7月21日時点)
・新宿区 32.2%(7月6~12日)
・中野区 14.9%(7月13~18日)
・世田谷区13.7%(7月17~23日)
・千代田区12.7%(7月13~19日)
・足立区 9.6%(7月15~21日)
・台東区 9.5%(7月13~19日)
・墨田区 9.4%(7月21日時点)
・中央区 9.2%(7月12~18日)
・北区 8.6%(7月11~17日)
・品川区 7.1%(7月1~17日)
・大田区 4.8%(7月13~19日)
・杉並区 4.5%(7月13~19日)
・八王子市11.3%(7月13~19日)
・町田市 2.5%(7月14~20日)
(注)上記14区市は、陽性率を何らかの形で明らかにしている自治体。
(出典)東京都、足立区、墨田区、品川区、杉並区は、自治体HPに掲載された「陽性率」を転記。
新宿区は、中曽根平和研究所の高橋義明.主任研究員の論考より。
中野区は、区HPの「感染症発生動向調査集計結果.令和2年 第28週分」に掲載された「陽性者数」「検査数」から計算。
世田谷区、千代田区、台東区、中央区、北区、大田区、八王子市、町田市は、自治体HPに掲載された「陽性者数」「検査数」から計算。
〈埼玉県.さいたま市〉
○埼玉県 3.7%(7月26日時点)
○さいたま市 6.3%(7月26日時点)
(出典)埼玉県.さいたま市ともに、自治体HPに掲載された「陽性率」を転記。
〈神奈川県.横浜市.川崎市〉
○神奈川県 3.6%(7月27日時点)
○横浜市 3.7%(7月13~19日)
○川崎市 4.2%(7月13~19日)
(出典)神奈川県、横浜市、川崎市ともに、自治体HPに掲載された「陽性率」を転記。
〈千葉県.千葉市〉
○千葉県 5.1%(7月25日時点)
○千葉市 5.2%(7月27時点)
(出典)千葉県、千葉市ともに、自治体HPに掲載された「陽性率」を転記
〈愛知県.名古屋市〉
○愛知県 11.2%(7月20~26日)
○名古屋市 「算出中」(7月27日時点)
(出典)愛知県は、県HPに掲載された「陽性者数」「検査数」から計算。
名古屋市は、市HPより転記。
〈大阪府.大阪市.堺市〉
○大阪府 9.4%(7月27日時点)
○大阪市 9.9%(7月22日時点)
○堺市 6.2%(7月26日時点)
(出典)大阪府、大阪市、堺市ともに、自治体HPに掲載された「陽性率」を転記。
〈福岡県.福岡市.北九州市〉
○福岡県 6.5%(7月20~26日)
○福岡市 10.4%(7月20~26日)
○北九州市 2.2%(7月27日時点)
(出典)福岡県、北九州市は自治体HPに掲載された「陽性率」を転記。
福岡市は、市HPに掲載された「陽性者数」「検査数」から計算。
【備考(1)】検査数.陽性率を公表していない東京都特別区(11区)の状況
○感染者数.患者数のみHPに掲載
……練馬区、豊島区、港区、渋谷区、江東区、江戸川区、葛飾区
○東京都HPのリンクを添付
……目黒区、文京区、荒川区
【備考(2)】政令市(20市)における地域ごとの感染者数.検査数.陽性率の公表について
○地域ごとの検査数.陽性率を公表している市はない。
○横浜市、千葉市は、行政区ごとの感染者数を公表。
○静岡市、福岡市、北九州市、熊本市は、感染者の属性欄に居住区を記載。
○上記以外の政令市は、地域ごとの感染者数の発表もない。