教育委員会の人事に関する異常な事態と市長の「教育改革」について
「議案117号 鎌倉市教育委員会の委員の選任について」、議案を取り下げたく、その理由を説明いたします。取下げの理由は、候補者である代田昭久氏より、辞退したい旨の申出しがあったためであります。辞退の理由につきましては、鎌倉市議会における議論が、現在の職である和田中学校において、これから卒業式を迎える生徒・保護者及び学校全体に対して良い影響を及ぼしていないこと、また、推薦をいただいた方にご迷惑がかかることを懸念したからであります。提案者である私として、このように議案の取下げに至ったことについて、結果として、候補者の代田氏と多くの関係者、議会に対してご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。」
上記は、3月7日の市議会・各派代表者会議で松尾市長自らが話した内容である。
その舌の根が乾かない3月22日にテレビ朝日の全国放送番組で、代田氏が鎌倉での「教育改革」の意欲を語り、3月24日には市長の政治団体である「松尾たかしを応援する会」がFAX連絡でマスメディアを集め、「記者会見」なるものを主催し、松尾市長と現職校長である代田氏本人が、「議案撤回の経緯を説明」したとのことである。
そして、その場で松尾市長は、市議選後の「6月議会に代田氏を教育委員として(再)提案したい」と述べたとのことである。
自ら混乱を生み取り下げた人事議案について、マスメディアを集めた「記者会見」なる場で、代田氏が同席の上で再提案を表明したわけであるが、極めて異例なことである。代田氏は現職の中学校校長でありながら、特定の政治団体の会見に参加したこと事体、「政治からの独立」という教育の基本に反し、地方公務員として重大問題であるが、一体この異常な動きの背景と本質は何なのか。
教育長問題の背景には、戦前を賛美する勢力と松尾市長との「密約」問題がある
そもそも鎌倉の教育長が昨年10月下旬から不在となっている背景には、伊藤玲子元市議(右翼的で特異な主張をしている勢力)と松尾市長が「密約」を交わしている問題がある。党議員団は平成22年2月議会の各派代表質問(共産党・高野洋一議員)で、「人事権者は、どこからも干渉を受けることなく、教育の目的を遂行するために独立性が担保されなければなりません。…ある人物と市長が事前協議の密約を交わす、こうした不公正なことはあってはならないと考えますが、市長と教育長の見解を伺います。」との問いに対し、松尾市長は「個人的な価値判断や特定の政治的影響力から中立性を保つなど、独立性の確保に十分留意」すると答弁した。
ところが、市長は昨年9月議会と12月議会において、自らの答弁に反し、伊藤元市議との「密約」に基づく人事案を議会に内示したことが事実上、明らかになった。結果、特定の政治的思惑を鎌倉の教育行政に持ち込むことにより、学校現場に混乱を生んではいけないと多数の議員が判断し、市長は正式提案できなかったわけである。
杉並区(当時の区長は維新の会の国会議員)の「改革」を鎌倉に持ち込む狙い
そして今回、三度目の正直とばかり、2月議会で強行的に提案してきたわけであるが、その本質は、破綻した東京都杉並区(和田中学校)における「教育改革」を鎌倉の教育現場に持ち込み、鎌倉における子ども中心の教育行政を変質させることにある。
民間人(リクルート出身)の校長を教育長に充てるのは初めてのことであり、教育現場との関係は極めて重要であるが、代田氏が行ってきた「夜スぺ」(放課後に一回500円で外部委託先に塾をさせる)や部活指導の民間委託など教育に企業経営の論理を持ち込むことが鎌倉の教育と子どもに良いことなのか、極めて重大な問題である。
また、PTAをなくしたため学校の実情や保護者の声が届きにくいという問題、学校選択制を導入したことの害悪など慎重な議論を要する問題が幾つもあるが、市長から教育現場との関係での説明は全く語られていない。「改革」=良いというだけである。
鎌倉の教育は、かまくら教育プランで基本的な方向を示し、具体的な取り組みは各学校の自主性を尊重する民主的な考えで進められている。そこに「民間校長」代田氏を教育長に充てる「改革」は結局、学校現場を尊重せず、破綻した「杉並方式」を押し付けようという動きであり、「改革」の名で鎌倉の教育を壊すものに他ならない。
教育は子どもと現場を中心にすべき 鎌倉の教育を守るために全力でたたかう
教育の中心は何よりも子どもであるが、松尾市長「改革」には子どもの視点が全くない。代田氏は、現在の中学校で「教員による女子生徒セクハラ問題」に対する対応が不適切だったため、平成23年1月に同区教委から文書訓告の処分を受けている。この事実だけでも鎌倉市の教育長として重大な支障であり、親御さんや子どもの視点から見れば、こうした「過去」のある人物を教育長にしようとはしないはずである。
この人物をすえることが「改革」であるとするならば、それは子どもよりも、政治的な目的を優先させることが「改革」の目的であることを語っているに等しい。
代田氏は、杉並区選出で現職大臣であるI氏側に、自ら作成した「推薦状」文書をもって働きかけ、議会の多数派工作を図ったことが既に明らかになっている。また、代田氏の先輩で和田中学校の前任校長である藤原和博氏は現在、大阪府教育委員会の特別顧問であり、維新の会と関係の深い人物である。さらに、代田氏は、みんなの党・A議員の友人であり、深い関係があることも周知の事実である。
そうした人物を「改革」と称して鎌倉の教育現場の責任者にすることは、子どもの視点や鎌倉の実情を踏まえた真の教育改革とは全く無縁な「政治的で汚い動き」であり、絶対に許してはならないと考えるものである。
広範な市民に松尾市長と「市長派勢力」による今日までの異常な動きの本質を伝え、鎌倉の教育と民主主義を守るために、市民とともに全力でたたかうものである。