鎌倉文学館に伺いました。建物の老朽化が著しいため、2年後に休館し大規模改修を行う予定となっています。運営は鎌倉市芸術文化振興財団が担っていますが、財団運営に大きな課題を抱えています。その主な要因は、鎌倉市の文化行政の弱さと基本的姿勢にあると考え、昨年の決算議会で本格的に取り上げました。財団と市が二人三脚で多彩な文化活動を担い支援していくことが「文化都市」再興の道です。今後も取り組んでいきます。
※ 令和2年一般会計決算等審査特別委員会(2020年9月14日)より
○高野委員 鎌倉文学館の指定管理期間が今年度でちょうど区切りになろうかと思います。それで、指定管理になっているのが鎌倉市芸術文化振興財団でありますけれども、私、今から10年近く前ですか、平成23年1月に総務常任委員会協議会が当時開かれて、そのとき財団から、一定の経営改善というんでしょうか、そういう計画書みたいなのが出て、審査したことがあったんです。それからもう10年近くになるわけですので、私は芸術文化振興財団の改めて鎌倉市における位置づけ、それから、市としての文化行政のあり方という、ちょっと大きな視点ですが、お伺いしたいと思います。
財団は、平成4年8月に鎌倉市が全額出資をして、石渡市長のときまでは、理事長に市長自らが座って、鎌倉における芸術文化振興をまさに図っていくと、そういうものとして設立されたものでありますが、その位置づけというのは、今日まで鎌倉市としては変えていないんでしょうか。そもそも論ですが、まず確認させていただきたいと思います。
○藤田文化人権課担当課長 鎌倉市芸術文化振興財団でございます。ここでは、財団ということでお話しさせていただきます。
設立の経過につきましては、高野委員の御説明のとおりでございます。平成17年、平成18年に入りまして、指定管理者制度導入のときから、独立した運営を行う団体ということで認識をしているところです。その後、財団は公益財団法人化ということで、平成24年4月1日に公益財団法人となりました。これは平成20年の公益法人制度の関連法、こういったものが施行されまして、公益財団法人に移行したということになっております。
この公益財団法人を選択した理由として、今後も、今までの活動を継続して、芸術文化の向上、それから振興を図る。それと地域文化の形成に寄与することができ、鎌倉市が出資した基本財産の継承及び税制上のメリットがあると、こういった判断をして、今日に至るといったところでございます。
○高野委員 独立したというのはどういう意味ですか。鎌倉市は、基本財産の出資はそのままにしているけど、あとは、皆さんでやってくださいと。鎌倉市は、荒っぽい言い方をすると、運営からは一切手を引きますよと、こういう意味なんですか。
○藤田文化人権課担当課長 独立した法人ということで、組織としての意思決定につきましても、理事ですとか、評議員、こういった役職の方々が議論をして、組織としての全体の意思決定をされている。そうしたことで運営をしておりますので、そうしたところについて、市が何がしかの関与をするというよりは、独立した運営をしているという認識を持っております。ですから、市が直接何かをするというような形ではないと考えています。
○高野委員 私も、別に市が直接何かしていくとは思っていないです。他の外郭団体もそうですよね。独立して運営しながら、しかし市も一定の関与というのか、関与の度合いというのはいろいろあるわけだけど、例えば、観光協会にしても、市からもOBが入ったりしますよね、事務的なプラスにするために。公園協会もそうですよね。独立して運営しながらも、市が一定の関与をしながらやっている。というものであるならば、鎌倉市の文化行政において、芸術文化振興財団というのはどういう位置づけなんですか。
鎌倉市における公益財団法人として存在している文化芸術振興を図る財団は、これ一つでしょう。しかも鎌倉市が3億円という巨額の出資をして。文化行政において、非常に大きな要の一つだと思うんだけど、そういうものとしては位置づけているんですか、いないんですか。
○藤田文化人権課担当課長 失礼しました。ちょっと説明が足りなかったようで申し訳ございません。実際、鎌倉文学館、それから鏑木清方記念美術館の指定管理業務を担っております。それから鎌倉市内で鎌倉芸術祭といったようなイベントも開催しているところでございますので、財団自体は鎌倉市において文化振興の重要なプレイヤー、担い手というふうに認識をしております。
○高野委員 そういうことだろうと思うんです。それで問題は、約10年前のときにも同じような指摘をしたんですが、当初は芸術館の運営が大きな柱だったわけです。そこでの収益で、人件費だとか、事務局体制だとかを大きく維持してきたわけですよね。それがよしあしは別として、指定管理者制度を入れたときに、運営から切り離される形になったわけです。それで今、鏑木清方記念館、鏑木さんは御遺族の御意志ということでやっている。文学館は公募による形で運営しているという形を取っている。
けれども、決算書をちょっと見させてもらいました、改めて。決算書は配信されていますよね。公益財団法人になって以降というのは、ちょっと概念が難しくて、細かくやると時間がかかっちゃうので、少し省略する面もありますが、公益財団法人になった年は資料によりますと、期末の正味財産が約4億1000万円弱あったのが、この令和元年、2019年度末だと、約3億6000万円まで減ってきている。そのうちの3億円というのは、鎌倉市が出資している、これ資本金ですね。その中身は何かというと、これも全部、財産目録が配信されていますから見たんですけど、国債と大阪府の公債と横浜市の公債と北海道の公債、あと、銀行債。これとあと普通預金が約5000万円あるのか。これを足すと3億円になる。これが基本財産だと。
何でこうなるのか。財団の運営が何かだらしがないのかと、しかし実はやはりそうではなくて、かつて運営の一番の収益の中心だった芸術館が、ある意味運営主体ではなくなって以降は、文学館の運営によって出る収益という言い方が正しいかどうか分かりませんが、それが中心で賄ってきてはいるんだけれども、他にも俳句&ハイクだとか、芸術祭とか、あと、独自の落語会とかもやっていますね。そういうものも含めた事務局体制をかなり少人数で組んでいる。非正規がかなり多いというふうに、かなり人件費も切り詰めている。昇給も停止しただとか、専務理事は賞与も全部カットしているだとか、そういう話も正確か分かりませんが、ちらっと耳に入ってきました。
そういうこともやりながら、しかし、文学館の運営による収益だけでは、他の業務、芸術祭だとか、そういう業務をやっている事務局体制が支え切れないから、結局、正味財産を使いながら、文学館の収益と正味財産を切り崩しながら、何とか細々と運営しているというのが実態だというのが、よく見ると分かるんです。その認識は市としてはどうなんですか。
○藤田文化人権課担当課長 財団の事業報告といったようなものを見る限り、指定管理施設二つと、あとは、本部といいますか、それ以外の文化振興事業を担う体制で事業を行ってきたので、その内情につきましては、詳しいところは私どもでは把握はしておりません。
○高野委員 内情について承知していないというのは、無責任な話なんですよ。基本財産も出しているわけですから。そんなことはないでしょうけど、破綻したら、市民の税金が無駄になるんですからね。独立して運営していくからといって、市が出したお金でやっているんだから、大本の財産は。だから、破綻するような無責任な運営はしていないと思います。歴代の民間の理事長を見ても、豊島屋の久保田さんがやって、その次、山内静夫さんがやって、今は鎌倉市の監査委員を長く勤められた森田さんがやられて、理事のメンバーも見ましたけど、そうそうたる方々ですよね、鎌倉市における。無責任な方々では決してないと思います。だから何とか財団を維持しながら、しかしどうしても総合的な事務局体制を賄い切れるだけの経費が、はっきり言えば、文学館を中心とした運営では成り立たないから、そこの差額が徐々に正味財産を平成24年度で言えば、約4億円あったのが、令和元年度では約3億6000万円でしょう。
そうするとあと、基本財産を除いた分は6000万円なんですよ。ところが、これもよく見てみると、特定資産というのがありますよね。これも財産目録を見て調べたんだけれども、6000万円あるからまだ何とかなるかと言ったら、実はそうでもなくて、6000万円のうち2576万円は、これは退職給付引当資産など簡単には崩せない。だから特定資産だと。そうすると、もう事実上、あと三千数百万円しかないということですね。
それで、コロナ禍でしょう。相当、多分減収がありますよね。それは他の施設にも言えるんだけど、文学館も、鏑木さんも。そうすると、もうこれはそんな遠くないうちに、来年度とか再来年度とかには、鎌倉市の基本財産である3億円、そのうちの普通預金は5000万円ということですけど、ここに及んでくるのではないかということが、決算書類から見てとれるんですよ。ここまで来ちゃったんです。10年前も似たような議論をしたんですけど。これを鎌倉市は独立してやっているからということで、放置していいんですか。
○藤田文化人権課担当課長 放置していいのか、もちろんいいわけはありませんので、実はそのために、財団の事務レベルではございますけれども、そういった方々といろいろお話合い、協議、そういったものを持つべきだろうということで、私は平成30年4月に文化人権課に着任いたしましたけれども、それ以降、機会があればいつでもお受けするような体制ではおりました。
しかしながら、なかなか今後の財団をどうしていくのか、事業をどうしていくのかといったところの具体的な話までには至らず、現在まで来てしまっているというところでございます。
ですから、文化人権課、財団と密接な関わりがある課としましては、こうした財団サイドとの協議ですとか、話合い、そういったものを積極的に行っていきたいと思いますし、私どもでも、財団にお願いといいますか、問いかけたい部分もございますので、ぜひともそういうお話はさせていただきたいというふうに考えております。
○高野委員 協議していくということは大事なことであろうというふうに思います。私、こういう状況というのは、何か鎌倉市の文化行政の水準というのかな、ありようがよく表れていると思うんですよ。本来なら財団なんだから、そこにもちろん財団の運用益というのもあるんだけど、長期の低金利政策でほとんど運用益もないような話を聞いています。
だから本当は、かつての芸術館のように、確固とした中心的な、それによって運営全体が明らかに成り立つようなもの、核となるものがあれば、何も議論は必要ないんだけど、そこがなくなって、なくなったんだけれども、文学館の運営をやることによって、何とか辛うじて生き残っていると。こういう状態なんですよ。
そうすると、そもそも財団って何だろうと。鎌倉でしょう、ここは。鎌倉の財団といったら、何かすごいんじゃないかというイメージになりますよ、全国的には。もっと鎌倉市の文化行政における核の一つとして、改めて捉え直して、どういうふうに前向きな、文化的な取組を展開できるかということを、やっぱり市も一緒に汗を流す必要があるんじゃないかと。何か生かさず殺さずみたいな、ちょっと言い方は悪いんだけど。
でも、これだけのそうそうたるメンバーが理事にも入られてやっているんだから、やっぱり鎌倉市の文化行政の核として捉え直して、そして、どのようにこの財団をある意味、また育てていくというのか、前向きなものにしていくか。そういうことをやっぱり一緒になってやるべきじゃないですか。
そこで聞きますけど、財団の事務局は、事務所というのはどこにあるんですか。
○藤田文化人権課担当課長 鎌倉文学館の中にございます。
○高野委員 じゃあ、文学館の運営でなくなったら、財団の事務所はなくなるんですか。
○藤田文化人権課担当課長 なくなったらという、ちょっと仮定の話なので、何とも申し上げにくいんですけれども、通常、指定管理事業者でもない団体が、そこにいるというのはあまり考えにくいのかなというふうに思っております。
○高野委員 よく分からないんだけど。本来は財団が文学館を運営していなくても、独立して財団は存在していて、独立して存在している財団がどこかを運営していると。ところが今の話だと、知っていて聞いて悪いんだけれども、行けば分かりますよ。小さい何だか事務所と言えるのか、そこを少人数でやっていますよ。
私、この間たまたま企画展を見に行くことがあって、たまたま、それで少し様子を見たんですけど、そういう体制でしょう。独自の事務所もないんでしょう。鎌倉市の文化芸術振興財団という名前の大きなものが。そうすると、文学館の運営ということに対してどういう責任を、今、公募で勝ち取ってやっているけれども、どういうふうに公共的に担ってもらうかということも考える必要があるというのが1点。
それから、理事の中に、やはり市が入って、市の職員、それはOBも含めてですけれども、さっきも言ったように、よく入っていますよね、観光協会だとか、ほかのところ。市とのつながりをつくるために、よしあしはあるんだろうけど。
しかし、今、そういう市とのパイプが、私が見た限りないように見える、体制上。そこら辺は考えるべきではありませんか。それはもちろん独立したそこの財団さんと市と話合ってもらって決めることだけれども、その辺も検討材料にはならないのですか。
○藤田文化人権課担当課長 現在、理事、評議員の中で、市のOBがというお話になりますと、お一方、市の職員だった方はいらっしゃいます。
パイプ役が必要ではないかということなんですけれども、パイプ役がいなければ駄目なのかというようなことではございませんので、私どものほうでしっかりと担当を立てまして、常日頃、指定管理業務というのも行っている、そういう関係もございますから、財団との連絡とか話、そういった関係は密にできるのではないかなと考えております。
○高野委員 指定管理者制度が導入されて以降のこの財団の位置づけが、ある意味中途半端なまま来ていて、そのことが今日、基本財産である3億円に、このままだと手を入れざるを得ないんじゃないかと思います。それは多分、それをしてはならないという法的な規制はないと思います。ただ、問題は税金ですから、やはりそこに手を入れるということは、財団が明らかに黄色信号というのかな、成長路線ではなくなっているということが対外的に明らかになるということですから、基本財産に食い込むということは。
そういう事態において、今、一定の質疑をしましたが、きちんと鎌倉の文化行政において、振興財団にどういう役割を果たしてもらいたいのか。その上で、市としてどういう関与をすべきなのか。
また、財団が単独で今後もやっていくのか、再編ということも含めて、どこと再編なんていうことは言いませんが、私はともかく、せっかくこういう財団があるんだから、鎌倉のやっぱり映像文化でもそうだし、もちろん文学館は担っていますから、そういう文芸的な面でもそうだし、芸術部門でもそうだし、いろんな市民団体があって、鎌倉は活発にやっていますけれども、一つの核として財団があるんだから、このままでまた10年後先、15年後先に、どんどん基本財産がなくなって、一体何をやってきたんだという事態にならないように、市としての真剣な協議を求めたいと思います。そのことについて、部長の見解を求めたいと思います。
○比留間共創計画部長 ただいま、委員の御質問ですが、どのような役割をということなんですけれども、委員御指摘のように、平成18年に指定管理者制度を導入した際に、その整理というのがしっかりできていなかったというところに、一つの原因もあるのかなというふうに感じているところでございます。
それで、やはり施設を管理していくという指定管理者としての役割、これは一つ持っていると思いますけれども、やはりそれより大きな役割というのが、この鎌倉の文化芸術を振興していく、当初の設立目的にありました、高度な文化を市民の方々に発信し、参加型の文化をしていくというようなこと。そういうことをやっていっていただくというのが本来のもう一つの重要な姿だというふうに考えております。
それで、やはり私がこれまで考えてきて、御相談をして、先ほど課長も答弁させていただいたんですけれども、やはりいろんなところから、いろんな事業をやっていただく中で、鎌倉の文化はこの団体だ。この団体でしかできないということに広げていく必要があるかなというふうに思っています。この間、例えば旧前田邸の活用ですとか、あと、映像文化の発信ですとか、昨年度までは、外部からの課長を採用しまして、文化の振興についていろいろと協議をしてきたところですけれども、何らか文化を振興していくような、鎌倉の文化を引っ張っていっていただけるような関係性を築いていきたいというのは我々も考えているところなので、引き続き、また財団と協議を進めていきたい、続けていきたいというふうに考えているところです。