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たかの洋一のかけある記

2019年11月18日

「子ども総合支援条例」案について(高野コメント)

現在、「(仮称)子どもがのびのびと自分らしく育つまち鎌倉条例(案)」についての意見募集(パブリックコメント)が行われています。昨年から、「鎌倉市子ども・子育て会議」、「鎌倉市総合教育会議」、市議会への報告、小学校、中学校、高等学校の生徒への意見聴取を踏まえたもので、12月2日までの期限となっています。その後、12月議会で所管の教育子どもみらい常任委員会への報告等を経て、来年2月議会で正式に提案されるのではないかと予測しています。

鎌倉市では、すべての子どもが大切にされ、のびのびと自分らしく安心して育つことができるために基本理念を定め、市の責務や保護者、地域住民等、育ちや学びに関係する施設関係者や事業者の役割を明らかにし、子どもに対する総合的な支援や環境整備を整えることを目的とする条例検討をしてきたと言っています。子育て支援の充実は誰もが望むことですが、問題はなぜこのような条例制定が必要なのか、その点についてです。

実は、この条例(案)は、松尾市長が市長選挙時に発表した『福祉政策マニフェスト2017~政策17「(仮称)子ども総合支援条例」の制定』に基づくものです。様々な専門職(福祉・医療)や熱意のある人たちの有志によって作成されたとありますが、市民的な要求に基づくものとは必ずしもいえないため、十分な説明責任が求められるところです。「つぎはぎの対策」ではなく中長期の視点に立った体系的な政策の実施が立案理由に掲げられていますが、「制定ありき」ではなく十分な市民的理解と合意が重要であると考えるものです。

1.子どもの権利規定が主軸に据えられているか

この条例(案)は、「子どもを総合的に支援」することを目標としていますが、その前提となる一人ひとりの子どもについての権利規定が十分であるかどうか、議論が必要です。前文には、『「児童の権利に関する条約」の考え方にのっとって、ひとりの人間として尊重されなければなりません。』との記述がされていますが、(市の責務)第4条第4項、(保護者の役割)第5条第1項などの規定で十分かどうか。子どもは単に支援の対象という受け身の存在ではなく、子どもの権利を正面から掲げ、それを主軸とする検討が求められます。

2.形式的内容でなく実効性が担保されているか

県内の先進的な事例である「川崎市子どもの権利条例」では、基本的な理念や権利の他、子どもの参加・意見表明のあり方、子どもの居場所のあり方、権利に関する学習の方法、子どもの人権保障、子どもに関する施策の提言をおこなう機関など、子どもの権利を保障する観点から、文字通り総合的な規定がされています。そのうえで具体的な取り組みや諸制度が構築され、実効性が担保されたものになっています。この点で、鎌倉市の条例(案)が十分であるかどうか、本当に実効性が担保されるのか、十分な検討が求められます。

3.子どもの居場所の確保など他の計画と整合性がついているか

とりわけ(子どもの居場所の確保)第18条や(多世代間交流の支援)第19条との関係では、この内容に逆行する「鎌倉市公共施設再編計画」との整合性が問われます。子どもや青少年関連施設の一方的な廃止が、利用者・住民に大きな不満と不信感を生んでおり、この条例(案)が必要というのであれば公共施設再編計画の見直しをはじめ、他の計画と整合性をつけなければ意味がありません。この点で、鎌倉市の現状はまさに「つぎはぎの対策」だらけの状態であることから、条例制定の前提条件として十分な検討が必要です。

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