「市会議員が、その範を示し」「特に期限を定めず、市域全域を対象に自宅、政治団体の所在地以外の場所へは、政治看板や政治ポスターを掲示しない」「既に掲示してある政治看板や政治ポスターは速やかに撤去し、景観保全促進をするものであります。」
こんな決議案が6月議会最終日の28日、鎌倉無所属の会の高橋・長嶋・安川の3市議から提出されました。日本共産党をはじめ提出者以外の全議員の反対で否決されましたが、この決議は定例会前の各派代表者会議で提出の意向が示されていたもので、各会派の意見が一致せず、取り扱わないことになっていたものです。
鎌倉では世界遺産登録にむけ、本年8~9月頃、ユネスコの専門機関イコモスによる現地調査が行われることになっています。決議案はこのことをとらえて、「コア史跡を回る際には…市街地の景観も同時に確認されることになる」とし、政治看板、政党ポスターの掲示が世界遺産登録の可否に影響し、登録の障害になるかのように述べ、撤去を要求しているのです。
世界遺産登録を口実に…
しかし、6月議会の総務常任委員会で、「政党ポスター等の貼り出しが美観・景観上、世界遺産の登録要件に関係、あるいは支障があるか?」との共産党(高野委員)の質問に、市の担当部長から「ありません」と明快な答弁があり、また私たちの調査でも、京都でも、奈良でも、このようなことは一切ありませんでした。
これは「表現の自由」「政治活動の自由」にかかわる重大な問題で、数の力で規制しようとするなどはとんでもない誤りです。「武家の古都・鎌倉」の世界遺産登録は学術的評価によって決まるものです。もちろん、まちをあげて資産を大切に保護し、歴史都市にふさわしい景観の創出に努めることは大切で、市民の自覚に立った、良識ある対応こそ重要なのだと思います。
こうした党市議団の奮闘のなかで、提出者以外の全員に問題の本質について理解が広がり、事なきを得ましたが、このような動きを見るにつけ、今後こうした事が様々な形で出てこないとも限りません。大阪・橋下市長の「維新の会」による市民の民主的な権利を制限する様々な動きが顕在化している事からも、今後これらの動向を注視することが大切だと思います。